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アメリカは破産するのか?
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2008年9月のリーマン・ショック以降に激変期を迎えたアメリカ経済に、焦点を当てたものである。
金融危機の煽りで、大手金融機関が複数倒産し、地方では09年だけで100を超える銀行が破綻した。
ビッグスリーのうちの2社(GM及びクライスラー)が破綻し、失業率は10%を超え、アメリカ経済及び基軸通貨ドルは、凋落の一途を辿っているかに見える。
景気悪化や金融機関の危機に対処するため、アメリカ政府は財政赤字を積み上げ、政府の負債残高は、今や12兆ドルを突破した。
連邦政府は国内からはもちろん、海外からも借り入れを増やし(二米国債の発行)、大手格付け機関のムーディーズは、アメリカ政府が、「最高格付けの『限界』を試す可能性がある」と、意味深なコメントを発している。
現在の世界の基軸通貨であるアメリカ・ドルは、ある面で最高格付けの米国債を裏づけとしている。
すなわち、最もデフォルトのリスクが低い(二格付けが高い)債券がドルで売買され、ドルで金利が支払われているからこそ、ドルは基軸通貨の位置を保てるという考え方である。
アメリカ政府の借り入れが限界に達し、格付け機関が米国債を格下げした結果、国債価格及びドルの価値が暴落し、アメリカは破滅的なインフレーションに突入するか、もしくはデフォルト(債務不履行)する。
これが、巷でささやかれる「アメリカ崩壊論」のメインストリームである。
ところで、本書のサブタイトルは「アメリカは破産するのか」となっている。
そもそも「国家の破産」とは、一体何を意味しているのだろうか。
筆者の過去の著作をお読みになられた方はご存知だろうが、三橋貴明という作家は定義が不明な「印象論」や、マスコミが得意とする「センセーショナルなキャッチフレーズ」が大嫌いである。
なぜならば、印象論やキャッチフレーズに捉われてまじめにいる限り、問題の正しい姿が見えてこないためだ。
問題の正しい姿が見えなければ、問題を正しく認識することはできない。
そして正しい問題認識なしで、それを解決することは、この世の誰にもできないのである。問題とは「数値」や「データ」などで正しく定義し、それを可視的に共有することさえできれば、おのずと解決の道は見えてくるものだ。
すなわち、印象論や大げさなフレーズではなく、データを用いたグラフ化、見える化などの作業こそが、問題の解決やソリューションの構築のために不可欠なのである。
そんな筆者が、なぜ「アメリカの破産」などという、センセーショナリズムに満ちたフレーズをタイトルに用いたのか。
それは、あえてこの種の用語を使うことで、問題の正しい「定義」や「見える化」について、読者に改めて考えてほしかったためである。
例えば、誰かに、「三橋さん、アメリカは破産しますか?」と、問われた場合、筆者はすぐに以下の通り、問い返すことになる。
「国家の破産の定義とは、何ですか?」恐らく100人中99人は、この種の返し方をされると、絶句してしまうだろう。
なぜならば、誰も「国家の破産」の正しい定義(ここでは「数値的」な定義)など、きちんと考えたことがないからだ。
というよりも、語る人によって定義がばらばらになるのが、この種の印象論に溢れた「破綻論」の特徴なのである。
しかも、印象論に基づき問題を定義したところで、それをもって万人を納得させることは不可能だ。
例えば、現在のアメリカの失業率は2ケタ前後に達しているが、この状況を「雇用の破綻」と呼んでも、誰も異議を唱えないだろう。
それでは「雇用の破綻」の定義は、失業率が2ケタ前後、もしくはそれ以上に上昇することかと問われれば、果たしてどうだろうか。
この「定義」で構わないのであれば、現在の日本は全く「雇用破綻」の状況には至っていないことになる。
何しろ、我が国の失業率は、未だに5%台を維持しているのだ。
とはいえ、現実に失業者が増えている以上、まじめにタ「日本の雇用も破綻している!」と主張したい人は多いだろう。
別に筆者も、日本に失業問題がないなどと極論をいう気はさらさらない。
だが、定義が不明確な印象論で人々の危機感を煽っても、何の解決にもならないということだ。
国家の破産にしても、同様だ。
「アメリカは破産しますか?」という問いに対しては、まずは「国家の破産」について数値的に定義をしなければならない。
さらに、その定義に基づき各種データを分析しなければ、筆者としても答えようがないのである。
本書では「国家の破産」を、「政府の負債について、利払いが不能になるか、もしくは返済が不可能になること」と定義したい。
政府の負債(いわゆる「国の借金」)の利払いや返済が不可能になるとは、要するに国家のデフォルトである。
具体的な例を出せば、1998年のロシアや2001年のアルゼンチンだ。
両国は、政府の「外貨建て」の負債の利払いや返済が不可能になり、最終的にデフォルトした。
これを「国家の破産」と定義するのであれば、数値的に非常に明快だ。
筆者としても、「アメリカは破産しますか?」という問いに対して、それなりの回答を考えることが可能になるわけである。
国家の破産を「政府の負債のデフォルト」と定義した以上、今度はアメリカ政府の負債について、データに基づいたグラフ化、見える化が必要になる。
アメリカ政府の「負債金額」とは、バランスシート(貸借対照表)の貸方に計上される統計項目である。
別にアメリカ政府に限らないが、何らかの経済主体の「負債」について論じるのであれば、バランスシートに関する基本的な知識は必須となる。
本書の章では、主にアメリカ政府の「国家のバランスシート」を中心に論じるが、そうである以上、読者には予めバランスシートに関する「基本的な見方」を理解しておいていただきたいと思い、以下簡単に解説する。
バランスシートとは、その経済主体(個人、企業、政府など)の全ての金融資産、及び金融負債を計上した財務諸表である。
一般的には、企業の決算などで使われる統計だが、別に個人や政府にしても、各経済主体にバランスシートが存在することに変わりはない。
例えば、読者が「現金」を100万円持っており、その他には何ら負債(借金)や資産がなかったとしよう。
その場合、読者のバランスシートの借方(左側)に「現金100万円」が計上されるが、貸方(右側)の負債はゼロである。

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